2003年8月15日金曜日

お盆とお化けと「妙な予感」



今日はお盆である。年に一度ご先祖様の精霊が帰ってこられる日だ。いろいろ不思議なことも起こるらしい。個人的には今までそれほど不思議な体験をしたことはないが、ひとつだけ奇妙なことがあった。

子供の時、夏になるとお化けごっこをして遊んだ。スイカの殻に穴を開けてお面を作り、毛布を上から被せたお化け装束で人を驚かせたものだ。子供のやることだからご愛敬であり、大人は驚いたふりをするだけであったが、根が単純だからお化けを演じている自分の方が本気で怖くなってしまう。想像力を肥大させてお化けは実在すると信じて暗闇を恐れおののいた。馬鹿な子供である。

特に怖かったのは二階に上る階段であった。一番小さい子供だったから夜寝るのも一番最初であり、一人で二階に寝に行くのであるが、これが怖くて怖くてしようがなかった。階段には電灯があるのだが、スウィッチが下についている。二階では電灯を消せないので、一階で消してから階段を上ると言うなんとも非合理的な仕組みだった。途中に丸窓があって障子が入っているのだが、月明かりなどがそこから差し込んでぼうっと薄明るい。その丸窓を上に眺めながら階段を上がるのだがこれが怖かった。以来、お化けとは二階の暗いところにおって、まあるい頭をしてマントを被り、人を上から襲う、二階は怖いという確信に近い思いこみをもつようになった。中学生ぐらいになっても一人で二階に上がるのを嫌がったくらいである。要は弱虫ですね。

さすがに大人になってからはそういうことはなくなったが、40年たって、1995年1月16日の夜、久しぶりに帰った実家で寝たが、二階に上がる時、ふと小さい時のお化けを思い出した。「黒いお化けが上から被さってくる」イメージである。いやな予感がしたが、そのまま二階に上り寝てしまった。

翌朝早朝5時46分、突然大音響と共に窓からさす星明かりの中で、黒い物体が頭の上に覆う被さってきた。一瞬にしてこれがあの子供の時夢にまで見たお化けの正体だとわかった。阪神大震災で、寝ていた上にタンスが倒れ、その上に屋根が落ちてきたのである。まったく身動きとれなくなった。普通は一階が壊れるものだが、二階だけが崩壊した。子供の頃の二階にはお化けが出るとの確信と予感は、40年後にたしかに実現したのである。二階は怖いという子供の頃の直感はやはり正しかったのだ。

だから「いやな予感」とか「何か気が進まない」という直感はやはり正しいことが多いのである。あまり軽視しては駄目なのであるというお話し。

ちょっと怖かったですか? 散人は怠け者だからよくこんな話を持ち出しては、やらなければいけない仕事を「気が進まない」と言って怠けてきました。でもやはり「妙な予感」というのは当たるもんなのです。

ともあれ阪神大震災のあと実家は取り壊されてしまったので、今日はお盆ですが散人には帰るべき実家もなく余丁町で過ごしています。東京は夏だというのに朝から冷たい雨。とてもお化けの出る雰囲気ではありません。ゆっくり寝られそうです。

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